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スポーツビジネスのあるべき姿について考える「勝敗に関係なくマーケットが成り立つ状態が必要」―前編―

今回のゲストは、博報堂でエグゼクティブクリエイティブディレクターを務め、現在は様々な分野でクリエイティブワークを手がける、「EVERY DAY IS THE DAY」のクリエイティブディレクター / CEOの佐藤夏生さん。株式会社F(エフ)の白川創一が、佐藤さんとスポーツビジネスのあるべき姿についてクリエイティブ目線で熱く語り合います。(株式会社Fより転載

・Fトークゲスト #4 佐藤夏生氏

―プロフィールー
1973年生まれ。EVERY DAY IS THE DAY クリエイティブディレクター / 共同代表博報堂エグゼクティブクリエイティブディレクター、HAKUHODO THE DAY代表を経て、2017年、ブランドの課題解決ではなく、可能性創造をリードするブランドエンジニアリングスタジオ EVERY DAY IS THE DAYを立ち上げる。

過去には、adidas、NIKE、Mercedes-Benzのクリエイティブディレクターを歴任。近年は、TOYOTAやBRIDGSTONEの技術開発、docomo「For ONEs」事業戦略、霧島酒造ビール事業戦略、渋谷区の都市デザイン等、クリエイティブ領域を拡張している。GOOD DESIGN賞をはじめ、ACCマーケティングエフェクティブネスグランプリ等受賞多数。2018年から、渋谷未来デザインのフューチャーデザイナーと横浜市立大学先端医科学研究センターのエグゼクティブアドバイザーも務めている。

スポーツマーケティングについて感じること

白川:我々(株式会社F)は、新規事業でスポーツの未来を創ろうとしています。佐藤さんは、目の前にあるモノというよりは新しいモノを創ることについて、パッションを持っていますよね。

佐藤:ですね。白川さんとは2006年頃に、スポーツマーケティングにネットやデジタルの力を活用して、「ファンと選手と協会をネット上で繋ぐことができるのではないか」という話をしましたよね。スポーツの熱が集まるポータルを創ろうとしていたと思います。

白川:実現しなかったですけどね。

佐藤:あの時考えていたものは、未だに現れませんね。

白川:そうですよね。スポーツが面白いと思う反面、残酷だと思うのは、今サッカーだけ見ても客席に観客があまり埋まっていなく、盛り上がっていないですからね。

一方で高校サッカーでは客席が満員になって、「あれって何なのかな?」と、いつも思います。最近では、マーケティングの人達が「エンゲージメントがどうのこうの」と言いますが、本質的にまだできていないですからね。

佐藤:スポーツの盛り上がりは、偶然に左右されていますからね。

白川:そう思います。

スポーツを文化にするために

佐藤:2019年のラグビーW杯が最終的に盛り上がりましたが、ポジティブに考えると、選手の頑張りとパフォーマンスによる結果だと思います。

白川:ラグビーW杯は、全てが良い方向に進んで素晴らしい結果となりました。そしてこれから大切なのは、「ラグビーというスポーツが、これから文化として成熟していくのか」ということになりますよね。

しかし文化となると、ラグビーの競技団体だけでは完結できないと思います。それゆえ、佐藤さんのような新しいモノを生み出すプロフェッショナルな人達が知恵を振り絞り、ラグビーを文化やライフスタイルとして成り立つような環境にしていくことが必要だと思います。

佐藤:「選手が良いパフォーマンスをする」「ヒーローが生まれる」「ある競技が注目される」ということは、昔も今も変わらなく、スポーツが成り立つのは全部試合の中の話ですよね。しかし、そのスポーツをビジネスモデルとして定着させるために、試合外でできることがもっとあると思います。

最近ではクラブを若い経営者やGMが盛り上げたりしていますが、そういうピッチの外で頑張るビジネスマンがまだまだ多くない。だから、クラブと協会でどれだけブランディングできるかが凄く大切になると思いますね。

白川:興行面では、野球とサッカーが先を進んでいますよね。

佐藤:GMがマーケティングを含むブランディングをして、選手がパフォーマンスを最大限に引き出せる環境を作り、チーム強化の支援とファンを絡めたビジネスモデルを構築することが理想です。

白川:その発想は面白いですよね。チームの将来像を創り、ファンをどうやって増やすのか、というビジネスモデル化させる必要を感じますね。海外ではジャパンマネーがあっての選手獲得もビジネスとなりますが、これにより何かを得られる訳ですから、もっとオープンにやってみても良いと思いますよね。

スポーツ=エンタメ

佐藤:アーティストを抱えるマネジメント会社の経営とスポーツビジネスの経営に、近いものを感じています。ヒット曲を生むのは偶然なところもありますが、きちんとマーケティングをやっていますからね。「コンテツ化する」「番組に取り上げてもらう」「選手の移籍」「IP管理」など、エンターテイメントビジネスで行っているのと同じように、スポーツビジネスにもバックヤードの部分にマーケティングや経営を持ち込む必要があると思います。

白川:スポーツ×エンターテイメントという点で、芸能事務所が選手のマネジメントを始めていますよね。どういう可能性を感じていますか?

佐藤:スポーツ=エンタメだと思いますし、スポーツビジネスをエンタメビジネスとして、次のように考えていくことが大切になると思います。

・クラブと芸能事務所が一緒に取り組んで、選手のIPでモノを売れるようにする。
・クラブが個人の選手をアーティストとして捉えて、選手の権利をマネジメントする。
・ブランディングオフィサーがクラブを統括し、マーケティングディレクターが実務を行う。

そして、これらによって得たお金を、チームと選手の強化に役立てていくようになれば良いと思います。

次回へ続く。

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