平和酒造の高木氏がビール造りで大切にしているのは、「味わい・アイデンティティ・風土」
昭和3年(1928年)創業の『平和酒造』(和歌山県海南市)。過去に第二次大戦などで廃業の危機にさらされたこともあったが、「平和な時代に酒造りをする」「自分達が造りたい物を造ろう」という想いで、酒造りに励んできたという。今回、平和酒造でビール醸造を行う高木加奈子さんが、ビール造りに懸ける想いを語った。
―まず、高木さんが『平和酒造』でビール造りを始めたきっかけを教えてください。
高木:東京農工大学在学時に、「ものづくり」と「お酒」の魅力にハマりました。就職活動中に、「クラフトビールメーカー」に勤めるか「酒蔵メーカー」に勤めるか悩みました。せっかく就職するのであれば、「新規の醸造免許取得が困難で、醸造に携わることが難しい清酒製造を行ってみたい」と考え、原料から酒造りに携わることのできる平和酒造株式会社に入社しました。
―ビール造りにおいて何が大切になりますか?
高木:製品としてオフフレーバー(※1)がないビール作りを心がけています。そのために、コンタミネーション(※2)がおこらないように醸造し、「自分たちが飲みたいと感じる味わいのビールを作ること」を大切にしています。
また、日本の和歌山の酒蔵で造るビールなので、飲んだ際に「そのアイデンティや風土を感じていただける」ことも大切にしています。
※1微生物の発生やビールの品質が劣化して生じる異臭や味
※2酵母以外のバクテリアの混入
―強いこだわりを感じます。ビールは、どのようにして完成するのでしょうか?
高木:一般的な流れではありますが、仕込み工程(糖化・濾過・煮沸・ワールプール)―発酵―熟成―充填、という流れとなります。
また、ビールにおいて味わいの設計図であるレシピづくりも非常に重要な工程です。定番ビールでも、農産品である麦芽やホップの品質、味わいのトレンドを見ながら微調整を心がけています。
―そのような工程で進むのですね。『平和酒造』のビールの特長を教えてください。
高木:「ビール」というお酒の良さは、「だれでも気軽に飲めること」「スターターとしての軽快さ」であると解釈して表現しています。
弊社にある「清酒 紀土」や「リキュール 鶴梅」…度数が強くゆっくり飲める、「お料理やお食事の中盤以降に活躍する」お酒であると考えます。
「平和クラフト」…それに対して「まず1杯目」にごくごく飲んでいただけるライトな酒質設計を大事にしております。
―色々な種類のビールがあるのですね。お勧めの飲み方はありますか?
高木:しっかり冷やして、可能でしたらグラスに移してお楽しみください!
―クライアントにどのような方がいますか?
高木:紀土のファンの方やクラフトビールファンの方に飲んでいただいています。一番うれしいのは、日本酒を飲まれる方でも「ビールは苦手」というお客様に飲んでいただき、「平和クラフトならおいしい!」「平和クラフトのおかげでビールが飲めるようになった」と言われることです。
一番身近な方ですと、実は上司である杜氏の柴田もその一人です。
―ビールの素晴らしさは、どこにあると思いますか?
高木:世界中のどこにでもあり、皆の共通言語となりうること、様々な味わいがあること、そして「美味しい」ということです。
―時代の変化と共にビールも変わるのでしょうか?
高木:新型コロナのこともありますが、人とのつながり方が変わるように、ビールの在り方も変わっていくかもしれません。しかし、メソポタミア文明からあったといわれるお酒なので、きっと進化して残っていくのではないでしょうか?
―今後の目標を教えてください。
高木:食や人の輪をより楽しいものにする「美味しいお酒」を、原料と熱源さえあれば「世界中のどこにいても造ることのできる技術者」になりたいです。
―最後に。高木さんにとって、ビールとは何になりますか?
高木:美味しい飲みものであり、仕事であり、ごほうびであり。日々の生活に欠かせない、関わり続けていきたいものです。 (了)
平和酒造
住所:和歌山県海南市溝ノ口119番地
電話:073-487-0189
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